『シング・ストリート 未来へのうた』その後を考察|コナーたちはイングランドに着いたのか?

「シングストリート 未来へのうた」はアイルランドに住むちょっと冴えない男子学生コナーがバンドを結成する話です。

よくある「男子学生×青春もの」かと思えば一味違うのが映画の魅力ですが、ラストシーンとその後については憶測が広がるものでした。

以下の内容には、映画のネタバレが含まれます。
「シングストリート」の映画をみてから読むのがおすすめ!!

『シング・ストリート』のその後は明確には描かれていません。あの小さな船で本当にイングランドに着いたのか、正直かなり危うい。でも私は、あのラストを見るたびに「到着」よりも「今なら行ける」と信じた勢いこそが美しいと思ってしまいます。

『シング・ストリート』のラストを簡単に振り返る

映画「シングストリート」のラストシーンはこのようなものでした。

コナーが結成したバンドは学校の体育館でギグ(ライブ)を成功させます。
その後、ガールフレンドのラフィーナ(学校の近くに立っていたこの女の子がかわいくて、気を引きたかったのがコナーがバンドを結成した理由でした)といっしょに「ここから出て、イングランド(ロンドン)へ行こう!」と衝動的に町を出ます。
船の乗り場まではコナーの兄が車で送り、兄(兄はコナーに音楽のことを教えてくれた存在でもある)と別れのハグをして、「おじいちゃんが持っていたボート」でアイルランドからイングランドを目指すことになりました。

いや、ちょっと待て?おじいちゃんのボート、一応モーターとかついてはいるけどイングランドまで行かなそうだよ!?

船は本当にイングランドに着いたのか?

ラストシーンの船は本当にイングランドに着いたのか。

これは最後まで描かれていません。

現実的には“着かない”可能性もある

ラストシーンでイングランドを目指したコナーたちの船ですが、出発してから雨と強い風に見舞われます。

また、二人の目の前に広がっているのはひたすら海で、まったく陸地は見えてきません。

それを踏まえると、やはりあの船はその後イングランドには着かなかった可能性が高いと思われます。

でもこの映画で大事なのは「到着」ではない

船がイングランドに着かなかったとしても、それはバッドエンドだと個人的には思いません。

実際に到着するかしないかっていうのは全然大事じゃなくて、「今、僕たちなんだってできる気がするんだ!」っていうあの勢いが美しいと感じました。

あの2人なら「イングランド遠いな!やっぱ帰るか‼お金貯めて飛行機一択だね!」って笑いながら帰ってこれる。船を送り出したコナーの兄(ブレンダン)も「おかえり!」って笑顔で迎えてくれるような気がします。

シングストリートのブレンダンの役割

コナーには兄と姉がいるのですが、圧倒的に兄ブレンダンのほうが存在感が強いです。

ブレンダンはコナーに「音楽」の世界の入り口をつくる役割をしていて、コナーが目を輝かせながらブレンダンが紹介するレコードを聴く姿は微笑ましい兄弟愛が感じられます。

映画の途中でブレンダンはやさぐれてしまい、音楽に夢中になる(そして現実がちょっと見えていない)コナーと険悪になる場面があるのですが、それがあるからこそ、ラストシーンで船の場所まで車で送るブレンダンの場面がより感情を揺さぶられるものになるのではないでしょうか。

シングストリートを「つまらない」と感じてしまう理由を考察

シングストリートで検索すると、「つまらない」というワードが候補として出てくるのですが、「以下のような特徴から「つまらない」「物足りない」印象があるのだと思われます。

・コナーの問題(家族関係、両親の不仲)が解決されたわけではない
・コナーのバンドが大きく認められて大成功するわけではない
(学校でのライブは盛り上がったけれど、それ以上のものはありませんでした)
・コナーに暴力的な態度をとった教師が罰されることもない

なので、「主人公が抱える問題の解決」「男子学生がなにかを成し遂げる作品」として考えたときに、ちょっと「え、そこで終わるの!?」感がある映画ではあります。

劇中、コナーが学校でミュージックビデオを撮るシーンがあるのですが、実際のミュージックビデオはちょっと「しょぼい」、さらに「ラフィーナに来てほしかったのに、現れない」。
でもコナーの想像のなかではミュージックビデオは大成功、自分は超かっこよくて、ラフィーナもかわいいワンピースを着て現れる。両親も今までの不仲が嘘のように仲良くダンスしている。
仮に、これがコナーの想像じゃなくて現実だったとして、このシーンがエンディングだったら「問題の解決」「成功」っぽさがある終わり方だったように感じます。

しかし『シング・ストリート』は、その成功した世界をあえて想像の中だけに留めてます。
コナーは「どこにでもいる男の子」「かっこよさに憧れてバンドを組む」「でも並外れた才能があるわけではない」。
だから映画の印象が「ちょっと地味」な感じがします。

だがそこがいいって人には刺さる映画

コナーの変身は最初かなり痛い。でもそこがいい

学校でスクールカーストが高いわけでもなく、ぱっとしない存在であるコナー。

正直第一印象はちょっと「ダサい男子」なのは否めません。さらに「女の子(ラフィーナ)に興味持ってもらいたいからバンド始めよう」っていうは、もうスタートからして痛くてダサい。

真似から始まる“自分なりのかっこよさ”

劇中、コナーはアーティストに影響されて髪型やメイクなどを真似します。

それが原因で校長先生に怒られる姿は、なんかどこの中学生も同じようなもんなんだなって思った…

あれをみて「自分も好きな芸能人の真似したことあるな…」ってなった人もいたはず。

よくある映画の「変身もの」との違い

映画でティーンエイジャーが「変身する」ものはよくありますが、わかりやすく一回目で「イケメンに変身」または「美少女に変身」して「まわりからは振り向かれる」存在になる場面が多いです。

でも、コナーの一回目の変身ってどう見ても「…似合ってなくないか!?」なんですよね。
「あのバンドのボーカルかっこいいな!よし、俺もやってみよう」のノリだから、かなりちぐはぐな感じで、周りの生徒(コナーは男子校に通っている)も「あいつイケメンじゃん!?」っていう反応ではない。

なので、一回目の変身で分かりやすく劇的に何かが変わるわけではないのだけど。映画の冒頭の「自信がなさそうな少年」からラストの「好きな物を見つけた少年」「行動力が芽生えた姿」は外見だけではなく、表情が大きく変わっているように見えます。

まとめ|『シング・ストリート』は未来へ着く映画ではなく、未来へ向かう映画

「シングストリート」は分かりやすく夢が叶う青春ものの映画ではありません。
でも、この映画をみて「自分の世界が変わるほどに夢中になれたこと」を思い出す人は多いのではないでしょうか。

思春期に夢中になったことがすべて「未来」につながるわけではないのですが、それでも「あのとき夢中になった気持ちは本当だった」「なんでもできるような気がした」一瞬のきらめきの美しさを呼び起こすような、そんな映画です。

 

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